どこの空も晴れれば青い。最近空を見てますか?


僕はそれほど日本を出たことがない。
韓国、ハワイ、イタリア、アメリカ西海岸(トランジットでフランクフルトとヒースローに降りたことはあるが)、それぐらいだ。
雨に降られたこともあったが、晴れの日はどこの空も青く、美しかった。
空の青は美しい。少なくとも僕は美しいと感じる。空の青が好きだ。
(雨の日は雨の日で悪くないけどね)

ご覧の通り、ガザの空も青く、美しい。

でも今は

土井敏邦Webコラム:日々の雑感 143: 【ガザ現地取材】サムニ・ファミリー虐殺事件(1)
土井敏邦Webコラム:日々の雑感 144:【ガザ現地取材】サムニ・ファミリー虐殺事件(2)
こんなことになってしまっている。

そしてこんなことも。
tnfuk [today's news from uk+]: 【ガザ攻撃】「あの人たちは、もうひとつの側の声など聞きたくないのですね」――娘を殺された医師の落胆

記事は、「流暢なヘブライ語イスラエルのテレビ視聴者に、3人の娘と姪を1人、イスラエルの戦車からの砲撃で失ったと語るエゼルディーン・アブ・アルアイシュ医師(イゼルディーン・アブルアイシュ医師)の残酷な悲劇が、ガザ作戦が始まって以来、イスラエルの大衆の耳を封じていた鋳造鉛(cast lead; この軍事作戦の名前でもある)の層をついに貫いた、ということに疑いはない」と書き始められている。

アブルアイシュ医師にとっては落胆することに、彼の訴えは何にもならなかった。輝かしい軍事的功績として見せられるものしか追ってこなかった多くのテレビ視聴者が、彼の喪失に涙を流した一方で、レヴァナ・スターンという女性が――3人の兵士の母親であるがゆえに、いついかなる場合もひどい口の聞き方をしてもよいと許可を与えられているかのような女性が、声をあらん限りに振り絞って記者会見に割って入った。「お気持ちはわかります、さぞやおつらいでしょう。けれど、あなたの家の中で何が起きていたか、誰にもわかりませんよ!」

そして、この女性のこの言葉を皮切りに、その周囲の人々が、イスラエルの兵士たちがガザで戦っているときにパレスチナ人に発言の場を与えるなど、病院もあつかましいことをする、と騒ぎ始めた、という。

後日、上記のレヴァナ・スターンさんへの取材。
tnfuk [today's news from uk+]: 【ガザ攻撃】自宅を砲撃され3人の娘さんを亡くしたアブルアイシュ医師を、BBCのジェレミー・ボーエンが取材

今朝、私はレヴァナ・スターンさんにも会ってきた。シェバ病院でのアブルアイシュ医師の記者会見に割って入って、こちらでは新聞一面の見出しになっていた女性である。

スターンさんは、(アブルアイシュ医師が会見を行なった病院の)に入院しているお父さんをお見舞いにきていた。負傷した兵士たちを見、その母親たちが泣いているのも見た。だから、パレスチナ人の医師にジャーナリストが大注目しているさまに、キレたのだ。マスコミがイスラエル人よりガザの人に大きな関心を寄せているのはグロテスクだと思ったのだ。

後で、彼女は大声を出したことを詫び、アブルアイシュ医師に、お嬢さんを亡くされたことは大変にお気の毒だと思いますと言ったが、それでも、イスラエルは合法的な自衛のための正義の戦争を戦っているのだという考えは今も変えていない。

世論調査によると、この考えはイスラエル人の間で大勢を占めている。だからこそ、一般市民の死者を気の毒に思っても、自分たちの国が間違っているとは思わない。

彼らは、ハマスがロケットを撃っているから起きたことなのだと言う。ガザからのロケットをどうにかしなければならないという強い感情は今もある。

スターンさんは、ガザからのロケットが届く範囲にいる8歳児は、恐怖を感じずに学校に行くこともできないのだと言った。

出発点を「ハマスのロケット」ということにしたイスラエル政府のプロパガンダは大成功だ。

ガザの8歳児は、ガザ地区のどこに住んでいようと、パレスチナ武装勢力の争いと、そして何より、いつあるかわからないIDFの空爆(暗殺作戦含む)や狙撃の恐怖と隣り合わせだ。それどころか、水や薬、食べ物だって乏しいのが常態化している。それも「政府が貧しいので買えない」のではなく、イスラエルの封鎖政策によってだ。

記事を読む限り、スターンさんはおかしな人ではない。おそらくは常識的な、普通の母親だ。そういう普通の人が、娘さんや姪っ子さんを殺害されたアブルアイシュさんの心を深く傷つける。

小田実は「人間古今東西みなチョボチョボや」と言い、中川敬は「人間みなボチボチ」と言い、山田玲司は「100%の悪も100%の善もない!フィクションだ!」と喝破した。

スターンさんも、アブルアイシュさんも、晴れの日には空を見て「きれいな青だな」と感じて微笑んだことがあるだろう。
その反面、誰かを傷つけてやりたい、殺してやりたいほど憎んだこともあるだろう。
それは僕も同じだし、この文章を目にした大抵の人はそうなんじゃないだろうか。
いや、サムニ・ファミリーで暴虐を働いた兵士だって、青い空を見て「きれいだな」と思ったことがあったはずだ。

人間は、普通は弱い。
立場、役割、そんなものを与えられると、それに従って、すがって、演じて生きようとする。
僕も例外じゃない。一介のサラリーマンで、特別な能力もなく、今は心と身体に変調を来たし、フルタイムで出勤も出来ないありさまだ。それでも会社にしがみついている。
自分の、自分たちの立場、役割、居場所……それをなくすかも知れないのは、恐怖だ。
そんな恐怖が、イスラエルガザ地区を封鎖させ、空爆させる。
ハマースにロケット弾を撃たせる。

明日の天気は全国的に晴れ……というわけじゃないみたいだけど、青空を見たら、ちょっとだけガザの空の青さを想って、その下でどんなことが行なわれたかを想像してみてください。

パレスチナの子供がミサイルで殺されています。殺されたのはあなたの子供かも知れない、と想像してください。
イスラエルの兵士が民間人の家で自動小銃を乱射しています。その兵士はあなたの恋人かもしれない、と想像してください。

どこの空も晴れれば青い。そう思えば、少しの間、自分の立場や役割を忘れることが出来るはず。
その状態で、ガザで、ムンバイで、チベットで、ダルフールで、スリランカで、北アイルランドで起こったこと、起こっていることを想像してみてください。
「自分たちとは関係のない、遠い世界の出来事」ではないのです。


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